エシカルアグリの肥料への考え方

わたしたち、エシカルアグリのお米づくりでは、『農薬を使用しない』という事をひとつのルールとし、肥料に関しては適切な利用という事にして、ある程度、メンバー各自の判断にお任せしていますが、ほとんどのメンバーの方は『肥料も使用せず』に栽培しております。

肥料と言っても有機肥料、無機肥料と色々ありますが、オーガニック(有機)栽培と言った場合には、「化成肥料を使わない」という栽培になりますが、有機肥料も含めて、人工的に作られた肥料を田んぼに入れない栽培を行っています(その田んぼの畦の雑草、稲刈り後の稲わら、籾殻などをすき込む場合はあります)。

肥料も農薬も使わないという栽培は「自然栽培」と呼ばれる事がありますが、明確な定義があるわけではなく、各個人農家さんが使っている言葉になります。エシカルアグリでは肥料の種類を選んで、適切な使い方であれば、肥料の使用自体は問題がないのではないかと思います。

肥料を使うメリット・デメリット

肥料を使うメリット

肥料を使うメリットはお米が取れる量(以下、「収量」)が増える事、また、適切な肥料の入れかであれば、該当の圃場における不足する肥料分を補ったりする事で食味が向上する可能性があるという事です。

収量

肥料を入れない場合の収量を3-5とした場合、肥料の入れ方によって7-10ぐらいに増やす事が出来ます。また、水の管理が少し雑であったり、田植え時期が遅れても、肥料によって生育の遅れを取り戻す事が出来ます。

食味(美味しさ)

一般的にアミノ酸を吸収させる事で食味は向上すると言われています。志太榛原地域では、水産業も盛んな為、お米の食味を向上させるアミノ酸が豊富な『魚粉』が手に入りやすく、当地域ならではお米づくりが出来ます。

また、お米が美味しくならない田んぼなどでは、適切な分析を行う事で、不足分を補ったり、土壌を改良していく事ができる場合があります。

食味計を使った食味改善(山口県の資料、p186辺りです)
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/b/5/3/b539210ff2570ebc5795cce6db85b838.pdf

肥料を使うデメリット

デメリットは肥料の種類によっては、環境負荷が非常に高いという事、また、入れすぎた場合においては食味、環境へ様々な弊害が起きます。

環境負荷

近年、大きな問題になっているのが海洋に与える負荷です。特に、被覆系と呼ばれる肥料において、プラスチックが使われており、それが海洋に流れ出ている「マイクロプラスチック」問題が出ております。

NHKより
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210518/k10013037271000.html

農業新聞
https://www.agrinews.co.jp/news/index/57817

この被覆肥料は田植え機で簡単に施肥でき、時間とともに水に溶けうrるように設計されているので、追肥作業を省力化できる為、栽培における省力化というメリットがあります。

楽をするという事ではなく、農家の経営という観点で見た場合、人件費コストの抑制は非常に重要な事になります。しかしながら、時代の変化が起きている今、これまで通りの肥料の使い方で良いのかということは考えなくてはいけないと思っております。

肥料の使いすぎ

肥料過多、特に窒素分の過多が発生した場合、タンパク質含有率が増え、食味を下げたり(「良質・良食味米安定生産・出荷のための栽培技術」p104)、いもち病の発生(日本植物防疫協会 )の多発要因となる事があります。

実際、田んぼの裏作で野菜を生産し、その肥料が多めの場合、病気が多発したり、食味を下げたりするというのは、農家の経験値としても昔から言われている事です。

肥料を使わないメリット・デメリット

肥料を使わないメリット

収量を考えなければ、最も合理的に食味の良いお米(農林水産省資料、『買ってもらえる米づくりに向けたポイント』p142)を作る事ができます。お米の食味を決めるポイントは「タンパク質」の含有を減らすという事ですが、先の農林水産省の資料にもある通り、窒素分が増えるとタンパク質の含有率は増えていきます(線形比例ではないですが)。つまり、食味を上げる(タンパク質を抑える)一番の方法は『肥料を入れない』という事です。

また、収量に影響を与えるいもち病の発生も、無施肥とした場合、年次による差を抑える事が出来るというメリットがあります(「堆肥連年施用水田と化学肥料連年施用水田における低農薬
栽培した水稲収量の年次変動と
その要因」p528 図6 日本作物學會紀事 著者前田忠信
)。

農家さんの間では、昔から、肥料を入れない、無農薬の稲は病気や害虫に強いとされていますが、データ上の裏付けが進んでいるように思います。

もちろん、無施肥の場合、圃場によるばらつきが大きく出てしまう為、全ての圃場で食味が向上するわけでもありませんし、病気に強くなるわけではありません。

肥料を使わないデメリット

収量の低下、管理コストの増大、圃場条件が悪い場合にどうにもならないの3点です。

収量の低下

これは、上記で示した資料内にある通り、データを参照するまでもなく、肥料を使わないと収量は低くなります。これは、致し方ないところではあるので、圃場条件が悪い田んぼに関しては、緑肥などをはじめとする環境に優しい肥料を使う事を考えてもいいのではないかと思います。

管理コストの増大

田植え時期の厳守、水の管理、畦に生えている雑草をすき込むなど、細かい管理をしっかりと積み重ねていかないとただでさえ少ない収量が更に低下します。ひとつひとつの田んぼ、稲への管理コストが上昇し、販売価格に転嫁せざるを得なくなり、消費者の方に経済的な負担を強いる形となります。

圃場条件の悪い田んぼ

田んぼには水の入り方・たまり方、地力(基礎肥料分の有無)など、周辺の環境など色々な個性があり、均一ではありません。施肥を行う事で使う事ができるようになる田んぼもありますが、施肥を行わないとした場合、打つ手がなくなるというデメリットはあります。

まとめ

エシカルアグリとしては、肥料を使う使わないというのは、自然環境への配慮を前提とした上で、それぞれにメリット・デメリットがありますので、各生産者さんの判断にお任せしています。化成肥料においても、その種類、利用の仕方が適切であれば、問題ないとのスタンスです。